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活動の軌跡

活動の評価

防災まちづくり大賞選定委員 高野公男 (株)マヌ都市建築研究所所長より、 以下の評価を頂きました。

電波というメディアを使って交信を楽しむアマチュア無線には、機材の操作に加えてロマンやファンタジーといった何か人を魅了するものが存在するようだ。 アマチュア無線は仲間同志の交信だけでなく、海難事故や自然災害などの際にも活躍し、社会貢献するケースが少なくない。先年の岩手・宮城内陸地震では、中山間地域のアマチュア無線が活躍し、避難・救助に役立ったことは記憶に新しい。 アマチュア無線は、本来的に趣味と社会貢献がセットとなっている活動のようだ。

福井市、社南地区の「防災アマ無線クラブ」は、アマチュア無線の新しいスタイルをつくり出した。町に住む無線愛好家が集まって、アマチュア無線を災害時の情報伝達手段としてより積極的に活用しようとグループを立ち上げ、組織化したのである。このグループのユニークなところは、 

  1. 無線の楽しさと災害時の非常通信の重要性をアピールし、同好の士を募ったこと。

  2. 必ずしも広域的な通信を行うのではなく、自分たちの住む地域(社南地区)に限定して交信ネットワークをつくったこと。

  3. 位置情報を確実にするために100メートルグリットの専用の災害時情報マップを作成し活用していること。

  4. 発災時の行動マニュアルを整備し、毎月、ロールコールという通信訓練を行っていることなどである。

電波法の制約もあり、新しい取り組みには様々な創意工夫が求められたようである。
このような民間組織による小さな限定地区での防災的な無線ネットワークづくりは、全国でも初めての画期的な試みではないだろうか。

 社南地区は福井市の西南に位置し、世帯数4,170、人口12,600人が住む農村と住宅が広がる新興住宅地である。無線基地局は災害時には避難所となる地区公民館の一室に置かれ、全域に居住するメンバー50名と交信できるようになっている。
地震など、携帯電話が使えないような災害時には、アマ無線による情報通信は大きな威力を発揮するだろう。

社南の地区民は心強い助っ人を得たことになる。 福井市は戦災で焼かれ、昭和23年の福井地震、九頭竜川決壊、平成16年福井水害など、大きな災害を何度も経験している。防災に対する住民意識は風化していないように見受けられた。メンバーも徐々に増え、女性も含め様々な職業の人たちが参加しているが、月一回のロールコールとその後の交流会が楽しみのようだ。
アマ無線を通した新しいコミュニティが育ちつつある。「近い将来、小中学生にも呼びかけ、仲間に入れて活動を盛り上げたい」とリーダーの山田さんは抱負を語ってくれた。
まずは、独創的でしなやかな取り組みに敬意を表したい。

高野公男

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